トップ板のブリッジの下あたりが弦の張力によって盛り上がり、
ブリッジとサウンドホールの間が凹む現象がトップ落ちと言います。
トップ落ちのデメリットとして考えられることは、
トップが変形したことによってブリッジの位置が変化し、弦高調整できなくなったり、
変形がひどくなると音程が悪くなる場合があると思います。
ブリッジも剥がれやすくなるかもしれません。
トップ落ちしないウクレレを作るのであれば、
単純にトップ材を厚くしたり、ブレイシング(力木)を多くして強度を上げればOK。
でも、そうすると楽器が振動しにくくなって、音が小さく硬くなります。
逆にトップ板を薄く、ブレイシングも少なくすれば、響きやすく「鳴る」ようになりますが、
その分耐久性が低くなります。
製作家の皆さんは、その相反する”音色”と”耐久性”のバランスを
日々試行錯誤されていると思います。
そういった意味で、特にサイズの小さいソプラノやコンサートでしっかり音量のある楽器を作ろうとすると、
トップ落ちはある程度は仕方ないことだと個人的には思いますけどね。
むしろ「トップがちょっと変形しているくらいが、板にテンションがかかっていい音がする」
という方も少なくありません。
もちろん、変形していなくても、素晴らしい音色のウクレレもあります。
トップ落ちのウクレレを推奨している訳ではありませんので。
とはいえ、私物で音色が気に入っているソプラノ、コンサートは、ほとんどトップ落ちしています。
こちらはそのうちの1本、1945年ごろのマーチンStyle3。
以前、とあるお店で偶然見つけ、ルックスに惹かれて購入。
ですが持ち帰って弾いてみると、所有しているもう1本のビンテージマーチン3Mに比べて音が小さく、
響きももう一つで・・・。
鏡で中を見たら、豪快にブレイシングが1本たされてました。
どうりでトップ落ちしてないな、と。
その後ほとんど弾くこともなく、数年間ケースの中で眠っていましたが、
ビンテージマーチンサウンド再現がテーマのブランド、「NOSTALGIA」を始める際、
板の厚みなど資料を集める目的も兼ねて、ビルダーの斉藤さんにお送りし、
採寸&リペア をしていただきました。
リペア前の写真です。
いやいや、なかなか大胆なリペア・・・。
お客さんに「とにかくトップ落ちが気にならないように治してください!」とか、
そんな感じでおねがいされたんでしょうかね〜。
で、その問題の後付けブレイシングを丁寧に剥がしてもらいました。
採寸も終了、割れ修理も完了し、オリジナルに近い形の音色がするようにリペアしていただきました。
で、弦を張ってみるとトップはご覧の通り。
予想通りトップ落ちしましたが、許容範囲内、
よく響いて、音が格段によくなりました。
ピッチも問題なく、弦高もバッチリ、不具合もなくおかげで現在大活躍。
ちなみにNOSTALGIAの厚みやブレーシングの構造は、上記の個体含め、
数本のビンテージマーチンを参考に、できる限り忠実に再現してます。
新品時からうっすらトップ落ちしていますが、
それを見込んで諸々調整してしておりますので、ご安心を。
もちろん音色は抜群です。
ついでにもう1本。
こちらはKo’olau のコンサート、年代不明ですが、ちょっと古いです。
現物を見ずにネットでポチっと購入。
届いてびっくり!なかなかの変形具合でした。
販売する立場でなんですが、現物見ないのはホント危険ですね・・・。
そのままでは使えないような状態でしたが、
一度ブリッジを剥がし、膨らみにそってブリッジの下側を削って整形し、再接着。
結果、弦高、ピッチもいい感じ、フレットも軽くすり合わせをして、生まれ変わりました。
特に音色が抜群!
色々と良い勉強になりました。
トップ落ちについては、いろんな考え方がありますし、
個々それぞれ求めているものも好みも違うので、ちゃんとした正解は無いと思います。
変形していない方が、見た目も良いですし、トラブルも少ないと思いますので、
それで好みの音がする楽器が見つかれば完璧だと思います。
ですが個人的には、弦高・ピッチを確認し、音が好みであれば、
トップが落ちていても、全く気にせず購入しています。
ウクレレ選びの参考になれば幸いです。